後鳥羽院と定家―「煙くらべ」の歌の真意―
藤原定家の歌が後鳥羽院の目に触れ、突如勘気を蒙ることとなった定家院勘事件の真相は、今もって明らかではない。しかし、実はこの歌には鍛冶の寓意や草薙の剣の暗示が仕組まれているのではないか。すなわち、この歌は草薙の剣を手にすることの叶わない後鳥羽院の悲嘆を詠じた辛辣極まりない揶揄の歌として理解することが可能なのだ。後鳥羽院はこの歌に隠された定家の真意をたちどころに見抜かれたため、激昂されたのではなかろうか。
「千葉商大紀要」
第50巻第1号