ヴォルテールは十八世紀啓蒙思想の巨人であり、社会悪、狂信、不寛容と戦った思想家として有名である。一方十九世紀末の小説家オクターヴ・ミルボーもゾラ等とともにドレフュス事件を契機に社会悪に対する戦いを始めた。この論文は、生い立ちからはじまってジャーナリストとして活躍したのちアナーキズムと出会うことで作家になったオクターヴ・ミルボーの姿を描き、その後パナマ・スキャンダルを経て反ユダヤ主義が興隆する時勢のなかで、国論を二分したドレフュス事件において、いかにミルボーが関わり、戦い、その体験を小説に結実させていったかを述べている。