本論文は、高度成長期に整備された中小企業政策に見られる特色の幾つかが、問題の生成期である戦前の産業合理化時代に登場していること、従って、生成期の特徴の理解が今日の中小企業問題理解のカギともなっていることを明らかにしたものである。それは、通産省が戦前・戦後の産業合理化や産業政策において、その問題認識や解決策の根幹を余り変更しなかったこと、中小企業政策も政策の重要な構成要素だったことによる。変更しなかったその認識や解決策とは同業者間の過当競争への過度な警戒心と競争制限・企業集中促進の政策のことである。 日本中小企業学会編