全面的小康社会の実現や絶対的貧困の撲滅などにより、中国の社会保障は2020年に大きな転換点を迎えた。「ポスト2020」の中国社会保障の方向性を示したのは、2021年に習近平が発表した社会保障に関する講話である。この講話は中国が黄金時代の福祉国家へのキャッチアップをやめ、「中国特色のある」わが道を模索することを表明し、学術界では「福祉中国」という概念が提示された。本稿は中国が目指そうとする「福祉中国」の内容およびその特徴を明らかにすることを目的とし、また、中国的な試みが後発国の社会保障にとってどのような意味をもつのかについて考察した。