字幕の自動追従および枠形状変化による情報保障の有効性を検討する.
本稿では,聴覚障害者の鑑賞に対応したユニバーサル人形劇システムの機能として,吹き出し型字幕の自動追従・枠の形状変化を開発した.吹き出し型字幕の自動追従機能は,距離画像センサを用いて舞台上の人形の位置を推定し,適切な位置に字幕を提示する機能である.枠の形状変化機能は,吹き出しの枠の形を変化させ,視覚的に声量・声色といった情報を保障する機能である.評価実験では,聴覚障害のある大学生24名を参加者とし,字幕の自動追従・提示位置固定の2種類,吹き出し枠の形状変化・定型の2種類,計4種類の字幕付与がなされた人形劇について主観的評価による比較を行わせた.その結果,自動追従機能に関しては,人形の挙動との同時認識・発話キャラクターの識別の面で提示位置固定字幕に比べ肯定的に評価された. また,吹き出し枠の形状変化においては,声量認識,感情理解の面で形状変化機能を実装したシステムが肯定的に捉えられた.