本稿では「団体基礎構造研究会(代表:辻中豊東海大学政治経済学部教授)」が体系的に、1997年から2019年の現在までに市民社会組織を継続的に調査してきた「団体の基礎構造に関する調査(JIGS調査と表記)」のデータ(JIGS2:2007・JIGS3:2012・JIGS4:2017)を利用し、ローカル・ガバナンスの現状の変化を考察した。実証的知見によれば、ここ10年間で、行政と地域住民組織の協働は進み、業務委託などの政策実施過程だけでなく、従来から参加する窓が開かれていた審議会への参加や政策提言といった政策形成過程にまで、政策参加の機会は増えるように変化してきた。しかし、そうであるからとって、必ずしも団体・組織の要望が十分に政策に反映されているとは限らなかった。行政のここ10年間の協働に対する志向性を分析してみた結果、その要因としては行政が運営の効率性を望んで協働を進めてきた可能性が挙げられる。市民社会組織にとって実のある協働を実現するためには、上手く要求を政策に変換させるための取り組みがより一層進むことが重要であるという示唆を得られた。