松下[2019] と松下[2023]では,(外注取引関係の有無を問わず)注文生産をしている中小製造業に「資源の依存性を決定する3つの要因」という理論を適用できると主張した。これによって,中小製造業にかかる研究蓄積の延長線上に論じられるという学術的貢献,ならびに,新製品や新サービスの開発前に「資源の依存性を決定する3つの要因」によって行使できる交渉力の程度を中小製造業自ら大まかに判断できる手法(最終製品を製造する発注側企業に対してどの程度の交渉力を発揮可能かを判断する手法,または,交渉力を高めるための改善点の模索をできる手法)を提示するという貢献を果たしたと考えている。
しかしながら,理論的解釈を果たしたとはいえ複数の課題が残っている。松下[2023]において5点の課題を挙げたが,本論では課題のひとつ,戦後から高度経済成長期を経て近年に至る取引関係の動態的な変遷として論じきれていないことに焦点を当てる。具体的には,継続的な取引にかかる先行研究の再整理をつうじて「資源の依存性を決定する3つの要因」に馴染む説明をして,課題の解消を試みることである。