本論文は、四国遍路の移動過程で構築されるミクロな人間関係を明らかにすることを目的に、巡礼者としての遍路と遍路を迎え入れる四国の地域住民が、遍路の移動にともない、どのような人間関係を形成し、それを通して自己や生活のあり方をいかに組み立て直しているのかを、聞き取り調査と映像社会学的調査によって究明したものである。
本論文では、「クロス・ナラティヴズ(交差した複数の語り・物語)」という独自の視座を打ち出し、四国遍路における物語の共同生成の実態と仕組みを解明した。さらに、物語の共同生成をイメージの共同生成の視座から捉え直し、四国四県でビデオ撮影された調査映像をもとに四国遍路の「関係イメージ(人と人との関係が象徴的に表れた行為)」を分析し、四国遍路における人びとの相互行為の具体的ありようと地域社会の社会的文脈を明らかにした。