千葉県市原市上総牛久駅前の牛久商店会の人びとの記憶が、現在の町の夏祭りを背景に語られていく作品である。
時田酒店の女将は、酒店に嫁いできたころ、牛久地域の3つの地区で競うように神輿が担がれ、若衆たちが豪快に酒を飲み交わしていた夏祭りの記憶を誇らしげに語る。2016年の夏祭りでは、祭りのために帰省した若者たちと交流する酒店女将の姿が映し出される。
また、牛久音頭の独特の音色が流れるなか、大津屋旅館の女将は、彼女が半世紀にわたって共に暮らしてきた女中の物語を交えて、この町の歴史を語りだす。「いろんな人が泊まっていった/商人、問屋に、薬売りに、兵隊に/女中もいっぱい抱えてて/それはもう賑やかだった/馬車が通り、車が通る/砂煙が舞い活気を連れてくる/そうよ、そういう街だったの」。このときの旅館女将の語りをもとに、女将の「牛久きおくうた」が作詞され、楽曲化されていった。この楽曲が女将の前で上演されたときの、彼女の嬉しそうな表情と、「これは私の人生そのものだよ」という語りも作品に収録されている。