本論文は、大規模な自然災害が企業の探索的・活用的行動に与える影響について明らかにすることを目的としている。組織学習における探索と活用に関する既存研究では企業レベルの要因や産業固有の要因の影響について多くの研究がなされてきた。しかしながら、産業間にまたがり影響を与えるようなマクロレベルの要因の影響についてはほとんど研究がなされてこなかった。そのため、本研究ではマクロレベルの要因が組織の行動に与える影響を分析することで、探索と活用に関する研究に貢献する。
2011年に発生した東日本大震災前後における企業の探索的行動・活用的行動の変化をテキスト分析した結果、震災後には企業はより安定的な行動(i.e., 活用)を重視していることが判明した。さらに企業は震災直後にリスクの高い探索的行動を最も減少させていることも判明した。また、探索的・活用的行動の詳細な内容を観測した結果は、探索的・活用的行動の中でも特に企業が力を入れている部分とそうでない部分があることを示唆している。