本稿は、分配構造をめぐる競争的側面に着目し、分配構造争奪理論を会計公準に基づいて理論的に定立することを目的とする。
従来、分配構造に関する議論は、主として企業内部における安定や維持の観点から展開されてきた。これに対し本稿は、資本市場に接続された企業において、企業価値の帰属が特定主体に固定的に確定されるものではなく、その帰属を決定する権限そのものが競争の対象となる点に着目する。
本稿は、企業内部に保持される「帰属未確定価値」の存在を前提として、その帰属を決定する権限を「分配決定権」と定義し、この権限の所在をめぐる主体間競争を「根源的争奪」として定式化する。そして、この争奪構造が、企業実体の公準、継続企業の公準、貨幣的評価の基準という会計公準に内在する構造から導かれることを明らかにする。
さらに本稿は、分配構造存続理論との対比を通じて、分配構造が「維持」と「競争」という二つの論理の相互作用によって形成される動的構造であることを示す。これにより、分配を単なる結果としてではなく、価値の帰属をめぐる権限構造として捉える理論的視角を提示する。