環境マネジメント・コントロール・システムは「環境戦略の実現や創造のために,マネジャが他の組織構成員に影響を与えるビジネス・プロセス」と定義することができる(安藤 2018b)。環境マネジメント・コントロール・システムの最も特徴的な推進プロセスは,最終段階の「企業内外におけるコミュニケーション」であるが,本報告では企業外におけるコミュニケーション・プロセスを特に,外部環境マネジメント・コントロール・システムとよび,ここを論点とした。
本報告は同システムの各段階を先行研究にもとづいて再検討し,システム全体の目的と特徴を明らかにすることを目的とした。先行研究の再検討から,外部環境マネジメント・コントロールは,共通の目的や価値の実現に向けた企業外部主体との「共創(co-creation)」(Roser et al. 2013)を目的としており,通常のマネジメント・コントロールに比べて,①企業外部主体との組織の境界を越えた長期継続的かつ双方向的なインタラクションを重視する,②自社と協業の相手,さらには社会や地球環境までもふくめた共通価値(CSV)の向上を目指す,③推進プロセスでは,他者への配慮と信頼関係にもとづいた共感(感受性)や洞察力(リテラシー)が重視されるという3つの特徴を持つことを明らかにした。そして以上の3つの特徴の追求を通じて企業は,他者や社会・地球環境と調和し,高い好感度を持って受容されることが重要であることを確認した。