本報告では、外部環境マネジメント・コントロール・システムの最終目標であるCSVに焦点を当てて、同システムの本質にアプローチした。現在世界中で繰り広げられているCSV論争は、企業と企業活動の本質をいかに捉えるか(捉えたいか)という価値観の違いが根源にあることを先行研究の再検討から明らかにした。しかし現実のCSV実践がどのように具体的に展開され、さらにその実践をどのような企業システムがもたらしているのかについては、先行研究からは明らかにできなかった。そのため報告者は、これらをCSV実践のオリジナル企業ネスレを事例分析することによって、明らかにしようとした。結果的にCSVをもたらす企業内の推進プロセスはSimons(1995)のインラタラクティブ・コントロール・システムを重層化(入れ子構造)にしたものであることを明らかにした。活用方法はインタラクションを重視した活用方法であり、顧客に対しては「さり気なさ(押しつけがましくない)」方法が有効であった。とりわけ日本型の活用方法では「慮る(おもんばかる)」という文化特性を重視していることを明らかにした。そしてCSVとは、感受性と経済合理性を等価に反応させた化合物であることを結論づけた。ここで感受性とは「環境会計」が重視するディシプリンで、経済合理性は「管理会計」が重視するディシプリンである。外部環境マネジメント・コントロール論がこれらを等価に重視するということは、同領域は今後、両領域の共通基盤(プラットフォーム)を形成する可能性がある(環境会計と管理会計のコンバージェンス(収斂:しゅうれん))。