「生活安定化の課題としての不安-成熟社会におけるヒューマンセキュリティ」
本稿は、ウルリッヒ・ベックといった再帰的近代化論を背景に、成熟社会における生活の不安定化を論じている。個人化やグローバル化の進展が国民社会の輪郭を堀崩して行く中で、人々の生活は様々な不安を抱えるようになる。これは、高度に近代化が達成されたことで進む個人化やリスク社会化を背景としている点で、再帰的な課題といえる。ここでは、私的な課題とされてきた個人の不安を、社会的な課題と理解する認識枠組みが求められるようになる。
慶応義塾大学21世紀COEプログラム「日本・アジアにおける総合政策学先導拠点」『総合政策学ワーキングペーパーシリーズ』