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Name ARAKAWA, Toshihiko
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Book Title

『「働く喜び」の喪失――ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読み直す』

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Summary

マックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を、資本主義成立の問題としてではなく、近代資本主義をも支えるシステマティックな生き方=生活態度、いいかえれば「駆り立てられながら働き続ける」エートスの宗教的形成という観点から、21世紀日本の社会状況と照らし合わせながら、「理念の作用」に焦点を当てて読み解いた。その際、理念の「上から」の作用にではなく、一般の平信徒が理念をどのように受容していくかという「下から」の作用に注目したが、それはヴェーバーの理解社会学的視点の抽出に他ならない。
 ヴェーバーが『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で指摘した理念としては、「天職」(Beruf)が知られているが、重要なのは、天職概念が単独作用するのではなく、予定説や確証思想と相互に連関し合いながら共働的に作用することである。したがって本書では、天職思想、予定説、確証思想の三者連関を取りだしたが、これはこれまで論じられてこなかった点である。その連関の解明によってこそ、16,17世紀に生きた平信徒たちが「救いの確かさ」を求める確証思想へと誘引されていった社会文化史的状況を理解することができ、近代資本主義へと駆り立てられるエートスの形成を理解できる。
 そうした近代資本主義成立期に近代人を「駆り立てた」構造を理解することによって、現代日本社会において現代人を「駆り立てる」構造へのパースペクティブを得られる。現代日本における、天職言説や孤独化、孤独死、排除、脱魔術化と再魔術化、意味喪失、職業によるアイデンティティ形成、絶えざる自己審査(自己統制)の要請、相互監視社会などの現代的問題が、西欧近世の問題と重なってくる。とりわけ二重予定説が強く迫る「救い」か「滅び」かの二項対立的な世界像が、新自由主義による格差拡大社会における「富者」か「貧者」かの二項対立的構造へと転化しており、この二項対立的に膠着した思考を打破することが必要である。

Publication Office

現代書館

Date of Issue

2020/07

Subject1

社会思想史