本稿では、BEPSプロジェクトが世界的に進展する中、行動計画13の移転価格文書化について検討している。15ある行動計画のうち行動計画13は規範性が最も高いミニマム・スタンダードに該当する。そのため、BEPSプロジェクトに参加する各国は行動計画13に基づく税制改革が求められる。オーストラリアや日本などは、マスターファイル、ローカルファイル、国別報告書の三層構造からなる移転価格文書化を導入している。本稿ではその効果についても分析し、プラス効果として三層構造の移転価格文書化により従来よりも豊富な情報を税務当局は得ることができ、その結果として多国籍企業との間にあった情報の非対称性が払拭されると主張している。他方、マイナス効果としては、納税意識の高い多国籍企業の納税協力費が増大すると考察している。