本稿は、千葉商科大学大学院政策研究科に提出した博士学位論文である。本稿では、国家間の適正な課税ベース配分の条件として、経済的二重課税の回避(第1条件)、過多過少のない課税ベース配分(第2条件)を設け、これらの条件をクリアする方法を模索している。現行の仕組みのもとでは、移転価格税制とAPAの組み合わせで、第1条件をクリアすることは可能であるが、内部取引利益を考慮すると、いずれの方法も独立企業原則による限り、第2条件はクリアできない。それに対して、定式配賦方式によれば、内部取引利益を合算所得に含め、国家間で課税ベースが配分されるので、第1条件も第2条件もクリアされると結論づけている。