本稿では,英語のリスニングにおいて,ボトムアップ処理の時点でに困難を抱えている日本人学習者を対象として,どうしてできなかったのかを明確にし,できるようになるためのサポートを提供すべく,ボトムアップ処理の向上を目指す「プロセス志向」のリスニング指導を組み込んだ授業について実践報告を行った。3 回実施したボトムアップ・リスニングの能力(英語のリズムや音声変化に対処して適切に分節化を行う力)を測るテストの結果,7 週目,多くの学習者が2 回目のテストの時点で大幅な向上を見せ,本実践での指導・学習活動がボトムアップ・リスニング能力の向上を助けたこと,また,ボトムアップ・リスニング能力については,比較的短期間で習得することが可能であることが確認できた。
また,授業評価アンケートの形で実施した意識調査を通して,本報告に関わる学習活動について考察を加え,学習者が自身の聴解プロセスに注目できているかを含めて,ここで目指すプロセス志向のアプローチを評価しうる質問項目を検討した。ほとんどの学生が授業を通して英語力の伸びを実感し,自由記述からボトムアップ・リスニングの能力の伸びがうかがえた。学習活動別で見ても,いずれにも満足度は高く,引き続き同様のやり方で実施しても問題ないと判断できる。ここで目指す「プロセス志向のアプローチ」がどの程度うまく機能したか,学習者自身が聴解プロセスをモニタリングでき,学習に活かせているかという点については,現時点では「そのような学習効果があったことがうかがえる」学習者もいる,としか言えない。本稿では,今後これらを確認・評価するために,アンケートの自由記述で言及された事項を検討し,質問項目の整理を行った。