本論文は中国都市部の最低生活保障制度の形成を考察することにより、制度の形成背景、形成過程、成立当時の制度の特徴、問題点を明らかにした。資本主義社会において、失業問題への対応として、失業保険と公的扶助制度が導入・展開されたが、中国も体制移行時に発生した失業問題に対して、同じ対応策をとった。成立時の制度の特徴として、全国的なナショナル・ミニマムが存在しないこと、原則的に労働能力を有する者を排除しないこと、厳格な資産調査を行うこと、財源が地方政府によって賄われることが挙げられる。また、問題点として、保障基準の低さと深刻な漏救問題を指摘した。