本報告では、失われた10年と称される90年代に初めて日本企業の業績低迷の萌芽がみられたのかを検証し、さらに個別業態間の競争力と業績などの関係を分析することで、配当政策などに関するガバナンスの視点を提示することを目的とした。低迷する日本企業を90年代のみに焦点を充てて、その改善策を直截に作成することは、新たな問題を経営にもたらす可能性が高く、また個別業態間の相違を勘案せずに一様な考え方に拠る改善を求めることにも、同様の懸念を残すこと、このため配当などに関するガバナンスへの関与を投資家が強めるに際しては、長期の視点と企業情報リテラシーへの一層の向上が求められることを示した。