コロナ禍においても業績・採用活動が安定している会計業界に焦点を当て、急激な社会変化に対応できる人材育成に関する大学教育について研究報告・共有を行った。
まず、コロナ禍が企業に与える影響、財務会計・税務会計の各分野におけるICT化の現状を報告した。次に、ICT化の進展と税務・会計分野への影響として、税務における電子申告の導入と利用、会計クラウドや電子帳簿等のICT活用による業務内容の変化を報告した。次に、先行研究から、税務会計分野でICT化が進展した場合、単純作業やルーティンの仕事はICTによる代替が可能であるのに対し、非単純作業や非ルーティンの仕事はICTでは代替困難との研究報告がなされていることを共有した。さらに、谷川が実施した企業の経理担当者への意識調査の結果において、先行研究と同様、ルーティンの作業はICTによる代替が可能である一方、非ルーティン作業はICTによる代替が難しいとの認識を持っているとの回答を得たことを報告した。そして、事例として、Excelで作成した会計帳簿(以下「ICT会計帳簿」とする。)について、大学の学園祭及び実店舗(飲食店)での活用事例を紹介するとともに、ICT会計帳簿は、単に会計情報を提供するばかりではなく、経営判断をも容易に可能となることを報告した。
以上より、持続可能な社会を実現し、急激に変化する社会に対応しうる人材育成のため、特に会計業界が求める人材という点にフォーカスした場合には、ICTでは代替が難しい分野が担当できる人材育成、すなわち、会計に関する高い専門知識とICTの基礎的知識を有し、自ら適切に情報を入手・活用できる人材を育成するための会計教育が求められる事を共有した。