JICPAにおいて設置された非営利組織委員会は,異なる形態にある非営利組織の会計基準間の整合性改善のために,「モデル会計基準」を開発し参考にすることで会計共通化を図るよう法人形態の異なる非営利組織に促している。本稿では,同組織の1つである社会福祉法人の会計基準についても俎上に載せてモデル会計基準に対応可能であるか考察している。非営利組織会計の特徴の1つである純資産の拘束性区分表示にフォーカスしマルチステークホルダーの理解可能性の視点からも考察している。
拘束性区分による表示は純資産だけではなく,資産の部においても同様に議論されている。第1号基本金に該当する法人設立時の特定の固定資産を拘束区分する表示基準をとるか、企業会計同様に流動固定区分とするか。マルチステークホルダーの立場で高い理解可能性を得られるかどうかは疑問となる。今後はフロー計算書も考慮に入れて拘束概念による表示基準の妥当性を検討していくことが必要になるといえよう。