本研究は,電子化された開示書類の記述形式について検討を行った。現行 EDINET で は,XBRL の対象書類と対象項目が拡大され,利用者の利便性が向上することが期待でき るが,一般の利用者には XBRL の理解は難しいこと,また他のさまざまな情報と合わせて 利用したいというニーズがあることを指摘した。
その上でセマンティック Web 技術を利用して XBRL 形式の財務諸表をさまざまな形式 に変換しようという研究の中から,財務諸表を RDF で記述しようという研究を取り上げ, EDINET の開示書類の XBRL インスタンスの一部を RDF/XML で記述することを試み た。RDF はトリプルという単純な形でリソースを表現しようというもので,これを使って XBRL インスタンス全体を表現することができれば,開示書類の利用者の利便性は大きく 向上すること期待できる。
一方で,財務諸表本体を RDF でどう記述するかはさまざまな方法が考えられる。RDF はトリプルという単純な記述方法であるため,柔軟な表現が可能になる反面,どのような 記述も可能になる。財務諸表を RDF でどう記述するか十分な検討が必要になるだろう。
Wikipedia から RDF を使って情報を抽出しようという DBpedia プロジェクトなど, RDF を使ったさまざまな情報が共有,リンクされるために公開されている。開示書類が電 子化されることで,利用者の利便性が向上したことは間違いないだろう。しかし,開示書 類に含まれる財務諸表をはじめとした事業情報が,そうした情報と共有,リンクされれば, さらに情報の有用性は向上することが期待できる。