この一連の研究ノートにおいては,断片的な音節文字の系譜(Fragmented genealogies of syllabaries)ということで連載をしているが,東西アジア全体で,断片的で孤立的に存在する音節文字には,埋もれている継承があるのではないかという問題意識の下に,音節文字の埋もれた継承を洗い出すことによって,西の果てにあるシュメールから東の果てにある日本まで,音節文字としての統一的な系譜が導き出されることを企図している。前回のインドの初期のアブギダ文字(abugida/alpha-syllabary)であるブラーフミー文字(Brāhmī script) に つ い て, 子 音 中 心 の ア ル フ ァ ベ ッ ト(あ る い は ア ブ ジ ャ ッ ド:abjad)であるフェニキア文字(Phoenician alphabet)からの流用が多くみられることか
ら,これらの関係性について,いくつかの前提,仮説を立て,わずかながらの検証を試みるものである。