2018年9月に名古屋大学で開催された国際シンポジウムにもとづき編集された論文集である。同時に科研費基盤研究A(代表:周藤芳幸 名古屋大学)15H01888, 18H03587の共同研究の成果の一部となっている。執筆した論文はContinuation and (Re)creation of Foundation Discourses in Lycia and their Historical Background(261-274ページ)である。リキアの都市シデュマで出土した碑文に記された縁起譚について、その伝承の系譜を考察したものである。対立する二つの系譜が存在すること、その対立の背景にリキアの都市内部での勢力をめぐる争いが存在することを示した。とくにトロスの伝承とクサントスの伝承との相違に注目した。なお、本論文の執筆にあたっては、2010年から2017年までかかわってきたトルコ共和国リキア地方のトロス遺跡発掘調査で得た知見も含まれている。