文構造の右方周縁部における発話行為投射の存在について考察した。Miyagawa (2012)では発話行為投射は述部が「ます」等の丁寧表現を伴う場合に存在するとしたが,本論考では聞き手を常に要求するYes/No疑問文や話者の視点をしめすモーダル「だろう」や「もの」を伴う文においても存在すると主張した。また,Miyagawaは動詞「思う」が選択する「と」補文においては,その中で丁寧表現が許されないことから,発話行為投射が存在しないとしているが,本論考では「だろう」や「もの」が許されることから発話行為投射が存在するとして,丁寧表現が生じ得ないのは主節動詞「思う」が終点項を持たないことと関連していると示唆した。