第一次大戦期における三井銀行対物産貸出の考察(上)
三井家部内の商業銀行経営廃止論が沈静化した後の三井銀行は、中枢商工業取引重点化に財閥系銀行としての新たな活路を見い出そうとした。しかし、この方針が現実のものとなったのは、第一次大戦に伴う空前の貿易ブームに遭遇してからである。ブームに沸く貿易業界がこの方針を成功俚に適用しえた最初の、かつ代表的な産業であった。本論文は、三井家傘下の兄弟会社であり、また中枢商工業に取引を重点化する新方針を体現したコマーシャル・ベースの大口取引先の性格をも帯びつつあった三井物産との貸出取引を考察したものである。
千葉商大論叢
第27巻第1号