本論文は、高度成長途上に姿を現した中小企業近代化政策について、「産業構造政策としての中小企業対策」と政策当局が位置づけた意味を検討し、またどのような経緯で近代化政策が登場し定着したか、1960年代後半までに整備された政策体系とはどのようなものだったか、さらになぜ近代化が対策の中軸から外されるに至ったか、などを分析したものである。本論文は近代化政策の盛衰の理由として、成長期の企業規模拡大の追求とその終焉だけでなく、近代化の資金的基礎だった政府系金融機関の動き、その民間銀行との競合を重視している。 車戸實編