本論文は、わが国の金融資本成立に関わる諸説を総括した上で、最大の民間銀行だった昭和恐慌前後の三井銀行を中心に、銀行と産業の結合密接化の経緯を明らかにしたものである。そして本論文は、同行並びに三井信託が、他の主要大銀行や政府系特殊銀行だった日本興業銀行などとともに、1932年以降、電力・製紙業の統合に乗り出し、これら産業の独占形成を金融面から推し進めるに至った経緯を実証的に明らかにし、わが国主要金融機関が最初に融合・癒着した分野が、これら二つの産業に他ならなかったことを示そうと試みている。 種瀬茂編