著書

基本情報

氏名 田原 慎二
氏名(カナ) タハラ シンジ
氏名(英語) TAHARA, Shinji
所属 商経学部
職名 准教授
researchmap研究者コード
researchmap機関

著書名

Evolving Diversity and Interdependence of Capitalisms: Transformations of Regional Integration in EU and Asia

単著・共著の別

共著

概要

うち一章("The Transforming Diversity and Interdependence of Growth Regimes and De-industrialization in European Countries and Japan")の執筆を担当(共著者:Hiroyasu Uemura)

 本論文は、先進諸国における脱工業化について、国際産業連関表データベースであるWorld Input-Output Database(WIOD)を利用して分析を行ったものである。
脱工業化とは、雇用量や産出量でみた製造業のシェア低下を指す。脱工業化のあり方を、本稿では、製造業の産出量増加と労働生産性上昇が伴う「ポジティブな脱工業化」、製造業の産出量減少を伴う「ネガティブな脱工業化」、対事業所サービスへの中間投入の増加によって発生する「製造業・サービス業連関を通じた脱工業化」、対個人サービスや公共サービスといった最終需要の拡大を伴う「サービス需要の拡大による脱工業化」の4つの類型に分類した。
 分析にあたっては、WIODの産業分類をその性質に応じて8部門に統合し、実質産出量変化の要因を分解する産業連関分析を行った。これと併せて、「実質産出量変化率=雇用変化率+労働生産性変化率」という恒等式に基づき、雇用でみた脱工業化のメカニズムを分析した。
 その結果、各国についての結果を比較すると、イギリスとアメリカでは「金融仲介サービス」や「対個人サービス」の雇用比率が高く、ドイツ、日本、イタリアでは「輸出コア」製造業のウェイトが相対的に高いとの特徴が得られた。脱工業化のメカニズムとしては、イギリス、アメリカでは「ネガティブな脱工業化」のメカニズムが強く働き、ドイツ、日本では「ポジティブな脱工業化」のメカニズムが作用していた。イタリアでは、製造業の産出量成長率が低いものの、労働生産性上昇率も低いため、結果として雇用の減少も緩慢なものとなっていることが分かった。
 これらを踏まえて、本稿では、脱工業化は先進諸国共通の現象であるが、その構造的特質と進行パタンは、各国の経済構造と成長体制によって異なった様相を示しているため、経済と社会の二重構造化や不安定化に対しては、各国の労働市場の制度的ルール等を考慮しつつ政策的対応を行うことが必要であると結論付けている。

発行所

Springer

発行年月

201812

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