仮想通貨の譲渡(売却又は使用等)による所得は、原則として雑所得になるとされている。これは、かかる所得が譲渡所得(キャピタルゲイン)に該当する余地を否定する理解を含む。所得区分の問題は、仮想通貨の具体的な課税関係の決定に大きく影響するにもかかわらず、かかる理解の法的根拠は必ずしも明らかではない。他方で、学説等においては、金子宏名誉教授をはじめとして譲渡所得該当性を肯定する(ことを示唆する)見解が複数示されている。法制度等が異なる諸外国の議論を論拠とすることには慎重さが求められるが、諸外国の課税庁の中には、仮想通貨の譲渡による所得がキャピタルゲインになりうることを明言するものが少なくない。
以上を踏まえて、本研究では、仮想通貨の譲渡による所得の譲渡所得該当性を否定する国税庁の見解に対する疑問を述べた後、かかる所得のキャピタルゲイン該当性を肯定する米国内国歳入庁(IRS)のガイダンスを比較対象に設定した上で、キャピタルゲイン課税及び為替差損益課税に係る連邦所得税法上の議論を検討することにより、上記の疑問をさらに展開する。