「アウグストゥスの社会政策―Lex Iulia de adulteriisにおける告発権の検討を通じた一考察―」(二)
先の検討を基礎に、同じ法の規定内容のうち、処罰手続きの中心となる告発権について考察した。殺害権がさまざまな制約を受け、事実上実行不可能なものであったことから、当該立法の目的は、姦通という家内問題を公のものとし、国家刑罰権を拡大した点が指摘できる。したがって、この法律が、ローマの伝統的な家族構造に変化をもたらし、国家管理の対象単位を「小家族」に確定して、管理そのものを強化したことがさらに明らかとなった。
早稲田法学(第76巻1号):早稲田大学